
Report 福祉発祥の地デンマークに学ぶ
もくじ
| 日時 |
2004年12月6日(月曜日)19:00〜21:00 |
| 場所 |
アクロス福岡・東オフィス 5F
久留米大学サテライト(福岡市中央区天神 1-1-1)TEL : 092-737-3111 |
| 講師 |
ゴンヴァア モンク氏 (デンマーク社会省・障害福祉課長)
ハンナ ヘック氏 (補助器具センター)
千葉忠夫氏 (日欧文化交流学院院長) |
ゆりかごから墓場までというより、生まれる以前から、なくなった後まで福祉がカバーしている、といえるくらい手厚い福祉
- (具体的には)
- 妊娠から、教育費、医療費などすべてが無料(国から支給)
- ※ 但し歯科治療は18歳から65歳までは実費を自己負担。65歳を越えると500円程度で治療が受けられる。
- 住まい:
- デンマークでは特別養護老人ホームなども20m2の個室では狭いという考え方から、現在は65m2程度の2DKが標準になってきている。施設というよりは、個人住宅の集まりのような形態
- 年金:
- 65歳になると全員国民年金を一律同額でもらう(貧富の差関係なく)日本円にすると平均月額18万円程度この年金で住居費等を払っても、手元に2〜3万円が残る
- 財源:
- 福祉の財源はすべて税金(50%の所得税、25%の消費税)
※ 高福祉・高負担?
デンマークのこうした制度は高福祉・高負担といわれるがデンマーク人は高負担とは感じていない。高齢になった後の負担はすべて国がみてくれる、つまり必ず自分に帰って来るから負担ではない。日本では国民は老後の安心のために銀行に貯金するが、デンマークでは貯金する変わりに税金を払う、という違いがある。
- 日本は世界一貯金率の高い国・・・経済大国
- デンマークは・・・・生活大国、福祉国家
※どういう国にするかは国民が決める?
- 日本は福祉国家を選ばず、経済大国を選んだ
- デンマークは福祉国家を選んだ
- その理由:
- デンマークは教育の段階から民主主義を重んじ、それを実践しているから。特に民主主義の理念、自由・平等・主権在民の中で、主権在民の意識が強い(国選投票率90%)
- どんな教育をしているのか?
- 日本のような競争の教育では国民の連帯感は生まれにくい。デンマークでは、小学校から中学校まで一貫教育で、受験がなく、一人一人の個別性を伸ばすことを大切にしている。教師は常に生徒の目線に立ち、遅れる生徒には補助教員がつく。音楽、美術、体育などには点数がなく、個性を尊重する。小さい時から共生を教えていく。
※ 教育の重要性
日本の教育を否定するわけではないし、経済大国が悪いわけではないが、福祉制度を充実させていくためには、民主主義を正しく理解し、政治に関心を持ち、権利をきちんと主張してほしい。そのためにも教育はとても大切である。
デンマークには、障害者手帳がない。障害者の為の特別な法律もない。援助してあげる、やってあげる、という発想がない。
※ 障害者手帳がなくてどうやって支援するのか?
国民一人一人を担当するケースワーカー(ソーシャルワーカー)が各自治体にいる。ケースワーカーはその人が生まれた時から関るため、障害の有無等について医師から情報を得て把握をし、その後の必要な支援を行うことができる。
※ 法律は?
生活サービス法という法律があり、すべての人にすべての権利が平等にある、と定められている。
※ 就労状況は?
手帳がないため正確にはわからないが、障害がある人は年金がその程度に応じて支給される。(月額30万位)働くかどうかは本人の希望次第で、就労を希望する人は希望就労先の環境整備のために、国がお金を出して工事を行う。知的障害の人は一般の就労が難しいため、作業所や授産施設で働く。ノーマライゼイションの発祥の地だからといって何もかも一緒ということではない。むしろ、日本の企業に国が1.8%の障害者雇用を促進しているのは、逆差別である
※ 施設は?
デンマークでは施設という概念はない、高齢者と同様、施設というよりは集合住宅のような形式で、年金をもらって自分で必要経費を払い暮らす。(もちろん税金も消費税も)管理能力のない人は職員がケアをするが、その場合障害者は利用者ではなく雇用者である。重度の人で管理能力のある人はパーソナルアシスタントを5〜6人持つことが出来る。また、自立が困難な人は生活支援センターに通い自立を目指す。
※ 権利と責任
バリアフリーなどの障害者の希望は国の政策に反映される一方、障害者といえども自分の人生に責任を持つことが基本である。人間としての平等の権利を持つ以上、年金を無計画に使い果たしてしまう、といった無責任なことは出来ない。可能な限り障害を持っていない人に近づけるよう国は支援し、当事者も努力をする。年金をもらうが、税金も支払うことで国民としての連帯感が生まれる。
※ ケアワーカーの質によって援助の中味が変わるのでは?
援助はマニュアルによって行われるのでそれほど差がないが、苦情受付の仕組みがきちんと出来ていること、皆権利を主張することで、質が保たれている。また社会省の中に、1993年に同権局といった、人の差別などを監視する部署が創られた。
※ 教育がきちんと出来ていれば監視する必要はないのでは?
どの国にも例外となる人はいる、障害者への差別のみではなく、男女差別の問題も監視している。
※ 障害者の問題はすべて社会省の管轄か?
以前はそうであったが、今は問題別に各省庁が担当している。例えば道路の問題はその専門の省庁というように。
※ バリアフリーへの取り組み状況はどうか?
これから建てる建物はすべてバリアフリーにするよう、法律で定められている。
- 高齢者、障害者共に低下した機能を補助器具でカバーすることが大切。ケアワーカーで対処できない場合に各県単位で設置されている補助器具センターが援助を行う。
- 利用者の希望に基づいて、まず機能の低下を調査し(テストルームがある)、日常生活がスムーズに送れるよう、また就労できるように支援する。(ソーシャルワーカー、OTなどが訪問してチェックする)
- デンマークでは介助者は人を抱えてはいけない、必ずリフトを使うことになっている。住民(利用者とは言わない)は機械を拒否することが多いが、きちんと説明し理解をしてもらう。
- コミュニケーションのハンディでも社会参加ができるよう、国が支援し、目の動きなどでパソコンを使ってコミュニケーションが取れるようにする。
- こうした器具は必要と判断されれば、すべて原則無料で貸し出しをする。
- 死亡等で使用しなくなった物は、修理し滅菌し、リサイクルする。
※ 聴覚障害はどう対処されているか?
デンマークは補聴器の先進国で、ほとんどが補聴器で聴力を補うことで足りている。
※ 痴呆はどのような支援をしているか?
痴呆は原則分離して援助をしている(5から多くても8人規模)大切なのは痴呆症コーディネーターの育成で1980年から取り組んでいる。拘束抑制の動きがあったが、現在では逆に本人の事故につながる場合や他人に危害を加える場合には拘束を認める方針が出され、センサーをつけたり、車椅子にテーブルをつけたりするようになった。
※ 寝たきりがいないということだが、特別な方法があるのか?
寝たきりは人為的に創られるもの、デンマークでは病気で安静が必要な時と昼寝や夜の就寝時以外は決して寝かせることをしない。手間がかかるのでは、とよく言われるが、結果的には寝たきりより手間がかからない。
※ 在宅での歯科診療はどのようにされているか?
在宅は往診制度がある。また施設にも訪問して歯科診療が行われている。
キーワード:
- 平等の理解
すべての人は皆平等に権利と義務を有している、という思想が徹底している。手厚い福祉を国が補償する変わりに、障害者といえども自立の努力をすることが求められる。
- 教育の重要性
福祉国家を目指すのなら、まず教育が大切である。競争を教えるのではなく、共生を教える。
- 主権在民の意識
国がしてくれない、行政に責任があるという前に、国民一人一人が政治に関心を持ち、自分の権利を主張することが重要である。
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